行方不明者になる。透明人間の日々。自分の気持ちに気づく、の話。
初めまして、あるいはYouTubeなどで知って頂いている方、ありがとうございます!
ウクレレ&ギタープレイヤーの麻生洋平です。
前回の続きですので、まだ未読の方は自己紹介をお読みください。
バークリーで周りのプレイヤーとギターの力量の差ににすっかり音楽を諦めた僕は、東京にて引き篭もる日々を始めました。
今回の失敗は「本当の自分の気持ちに気づかない」「比較相手を間違える」です。
音楽を諦めた僕は、東京高井戸の狭いアパートを借りて、一人暮らしを始めました。
この時の僕の生活を知っている人はほとんどいません。
親も友人もまだ僕がアメリカにいると思っていました。
その頃始めたバイトで、会った新しい人々は僕が音楽を志していたことを知りません。
まるで透明人間になったような気分でした。
行方不明の人間のことを考えたことがあるでしょうか。あの時の僕がまさにその行方不明者です。自分の昔のことを知っている人は自分の周りには1人もいない。
僕は音楽をやめてしまった自分が恥ずかしく、誰とも連絡が取れませんでした。
音楽もやる気がなく、何をやれば良いのかわからない日々。
時間だけはあるので昔の夢を思い出して、漫画や小説を書いたりしていましたが、結局全て中途半端に終わってしまいました。
何者でもない日々を続けて、それでも心を癒してくれたのは結局ギターでした。
仕事から帰って、テレビもラジオもないので、手に取るのはギター。
自分の心を癒してくれるのはギター。
そして自分の心にハッと気づきました。
「僕はただギターが上手くなりたいだけなんだ。」
ここに失敗がありました。
音楽で立身出世する。スーパースターになる。もちろん素敵なことです。
でもそもそもの「本当の自分の気持ち」はなんだったのか。
楽器というものは触ってもなかなか上手くなりません。大いなる努力と時間が必要です。
でも練習すればちょっとずつ上手くなる。
Fコードが押さえられるようになる。
弾けないフレーズが弾けるようになる。
その一歩一歩の成長が楽しくて、楽器を続けてきたのです。
そして「比較相手を間違えないこと」です。
他人との比較で上手い下手には何の意味もありません。
どの分野でも自分より上手くできる人は、必ずどこにでもいます。
僕はそれに一喜一憂して、音楽を諦めるところまで行きました。
でも本当の自分の比較相手は常に昨日の自分です。
昨日の自分よりちょっとだけ上手くなれば良い。
人より抜きん出たスタープレイヤーになる必要はない。
人気者になる必要もない。
昨日の自分よりちょっとでも成長することが大事なんだ。
そう気がつきました。
そして僕はまたギターを弾くようになりました。
セッションに行くために練習し、飯田ジャズスクールでレッスンに通うようにもなりました。あの時、基礎を教えてくれた恩師たちには感謝しております。
そこからは練習の日々。
僕はその行方不明時期を修業期間と定め、1年間と決め、とにかく練習しました。
バークリーで出会った人々が持っていた基礎力を自分でも持てるように、基礎練習を毎日やりました。
それでもあの時バークリーであった素晴らしいプレイヤーには遠く及びませんが、基礎的なことは理解できるようになりました。
その後は、Acousphere奥沢茂幸さんのスクールでレッスン業を始め、教えることを学びました。教えてはいましたが、実は生徒さんから教わることの方が多かったです。今もそうです。
この頃、JakeShimabukuroと共演した奥沢さんの勧めもあり、ウクレレも始めました。
それとともにアーティスト業にも取り組み、ライブやイベントの開催、サポートも始めました。
アーティスト業、サポート業をやっていく中で、自分のためのレコーディング環境が必要となり、機材を買い揃えるとともにレコーディングの勉強をしました。
YouTubeなどの動画サービスの開始とともに、カメラ機材を買い揃え、動画サービスも開始。
それらを複合的にやれるようになったところでプロデュース業も開始しました。
そんな時、コロナ禍が始まりました。
全ての業務がストップしました。
そして一番最初の自己紹介に書いたように、この技術ではこの先乗り越えられないだろう、ということで、再度音楽に立ち帰り、自分自身の技術を上げる1年間を山奥で過ごしました。
そうしたおかげで、神谷えりさんに会い、金澤健太さんをはじめとした素晴らしいミュージシャンたちに会うことができました。こーじゅんさんにも会えました。
そしてみんなに言われました。
「麻生君、あなたは上手い。」
自分の技術を、憧れる人に褒めてもらえることは、本当に嬉しいことです。
やってきて良かったな、と心から思えました。
自分が憧れるミュージシャンと同じステージに立ち、賞賛を受け、夢が叶ったと思いました。
しかしここに恐ろしい最大の失敗が隠れていました。
長くなりました。読んでいただきありがとうございます。
次回は、技術力など必要のない世界。生きていくために本当に必要なもの、です。
次回に続きます。