夢の先。技術力など必要のない世界の話。
初めまして、あるいはYouTubeなどで知って頂いている方、ありがとうございます!
ウクレレ&ギタープレイヤーの麻生洋平です。
前回の続きですので、まだ未読の方は自己紹介をお読みください。
https://monabooks.bitfan.id/contents/140350
今回の失敗は「夢の先」です。
ついに自分が憧れるミュージシャンと同じステージに立ち、賞賛を受け、夢が叶ったと思いました。自分の憧れの人に「君は上手い」と言われ、いろんな新しい凄腕のミュージシャンに会うことが出来るようになりました。
そんな新しい人々に会う中で一つの疑問が湧き始めました。
「技術があるからって何だろう。どうもそういうことでこの世界は動いていないぞ。」
プロの世界のみなさんは当たり前に技術力が高いです。
でもその中でも初見がバリバリ出来る人もいれば、譜面は読めないけどしっかり練習してきて高いパフォーマンスを残す人、アドリブをガンガン弾きこなす人もいれば、全くアドリブできないけどフレーズを作り込んでくる人もいます。
みんな、それぞれが自分の良さを活かして生きている。
演奏面だけではありません。カメラが上手い、デザインが得意。プログラムができる。
などさまざまな自分の長所を活かし、音楽という武器と掛け合わせて戦っています。
音楽ができる。
楽器が上手い。
それはただの前提に過ぎなかったのです。
それをどう生かすか、どう人に届けるか、それが一番大事なことでした。
ある日、神谷えりさんに言われました。
「麻生君、君は上手い。」
「ありがとうございます。」と僕は言いました。
「でも上手いプレイヤーは大変だよ。」
「圧倒的1位の実力だったら君は生きていける。でも君の上手さはマラソン大会でいうと学校で9、10位の上手さだ。それだったら最下位の方が良い。」
「最下位の人が頑張ってゴールする姿。その姿に人は感動して拍手します。」
「1位のプレイヤーの名前は覚える。最下位の人にも感動する。でも上位のプレイヤーの名前を人は覚えてはくれない。」
音楽が上手くなれば幸せになれる。
そう信じて、練習してきた僕はそこではたと壁にぶつかりました。
自分が憧れている音楽家に認めてもらい、一緒に演奏する。
僕が学生時代、夢見ていたのは、ステージ上から自分の名前が呼ばれ、颯爽と登場し、喝采の中、演奏する。そんな姿でした。
そんな夢のようなことがモーションブルーやブルースアレイで起こり、夢は叶いました。
夢は叶いましたが、明日は来ます。
日常が来て、それでも人は生きていかなければなりません。
音楽というスキルを使い、一体僕は何がしたいのか?
僕は立ち止まってしまいました。
「夢の先」それを考えていませんでした。
実は僕の夢は大したことがありません。
自作曲を書いて、人に歌ってもらうこと。
そして音楽が上手くなること。
これだけです。
自作曲を書くのは、自分で頑張れば書けます。
例えば自分の曲を宇多田ヒカルに歌ってもらうのはいろんなことをクリアしなければならないでしょうが、それでもその曲を書く、というのは自分の力だけで出来ます。
(フルストリングスを生で入れたい、となるとお金はかかりそうですが、その時は皆さんに助けてもらえるように頑張ります。)
音楽が上手くなること。
これも環境が大事ですが、今の環境だと自分より業界歴の長い先輩たちの中で、自分より上手い人たちと演奏できるので、レベルアップには事欠きません。(1日で30曲覚えたりすることはザラにあります。)
SNSの世界でよく見る、武道館を満員にしたい!や、100万人フォロワーにしたい!、とにかく人を集めたい!なんていうキラキラした夢は元々持っていません。
「この人なんだか好きだなあ」、そういう風に思ってくれる人と密に繋がることの方が僕には重要です。
僕のささやかな夢は、自分の頑張りで達成することが出来ます。
でもそれだけで良いのかな?
もっと何かできないかな?
そうして僕が思ったのは、「僕の力を人のために活かせないか」ということです。
コロナ禍で、音楽なんて何の役にも立たないじゃないか、と心の底から絶望しました。
人の病気も治せないし、お腹を膨らますこともできない。
自分が信じて努力してきた力は、あまりに無力すぎる。
医者か農家を志せば良かった、と心から思いました。
でもコロナが落ち着くにつれ、「あなたの音楽で癒されました。」「明日も頑張ろうと思いました。」など温かい言葉やメールが届くようになりました。
僕でも人の役に立てるんだ、と思いました。
そして自分の力を人の役に立つように使えないか、と考えるようになりました。
「人の夢の役に立ちたい。」
それが僕の今の目標です。
韓国のウクレレプレイヤー、チェ・ミンソクさんが日本でライブがしたいんだ、とDMをくれました。実際に会ったことはありませんでしたが、それはぜひ!と2つの会場をブッキングして、集客し開催しました。
ボーカリストの神谷えりさんがPVを撮りたい、ということであれば、スタッフを集め撮影場所を決めました。話し合いながら、編集も僕がやっています。
ウクレレ弾き語りの花城よしのさんの歌声をもっと届けたい、と思えば、イベントを組み、自作曲を作り、ボーカル用に機材も一新し、開催しました。
そうしていると、来てくれたお客さんが「花城さんとの演奏をぜひコットンクラブで見たい!」と言ったり、ミンソクさんが「韓国で一緒に演奏しよう!」と言ってくれます。
この文章を書いていく中でTwitterで福島のウクレレプレイヤーのサイトウユウキさんが「麻生さんに会いたいです。」と言ってくれました。大変光栄なことです。
その夢を僕は叶えたいです。
また長くなってしまいました。
お読みいただきありがとうございました。
次回は最終回にしようと思います。(多分。)
次回は「技術は鍵、人を信じる。」です。